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活版是字緒 かっぱんcollegio

土の中には鉛の信仰が、眠っている。 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する一つに原城跡がある。1637年に起こった島原・天草一揆の主戦場だ。これまでに、人骨とともにたくさんの信心具が発掘されている。その中に、火縄銃で用いる銃弾を溶かして鋳造された鉛の十字架が見つかっている。 島原・天草一揆より前、1590年には天正遣欧少年使節によって、印刷機と鉛活字が長崎に持ち帰られている。島原、天草へと場所を移しながら各地の「collegio(神学校)」で印刷が行なわれた。多くがキリスト教に関わる書物であり、幕府から禁教令が出されると印刷機や鉛活字も追放される。印刷機も鉛活字も行方がわからない。小さな鉛の活字がどこからか発掘されれば、活版印刷が行われていた「collegio」の場所を具体的に示す証拠にもなるだろう。 土の中に眠っていた鉛の十字架、今もまだ眠っているかもしれない鉛活字。これら二つを緒に、作品制作を行なった。 SDGsと自分の研究対象としてきた活版印刷とのつながりを考えたことで、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」という形ある歴史に触れた。そして、美術作品の形式でこそ、形に残らなかった歴史・まだ形として見つかっていない歴史を残すことができると思った。

協力:山西もも(鋳造) 吉野俊太郎(什器制作)

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関根ひかり

2016年東京藝術大学美術研究科デザイン専攻修士課程修了。2021年東京藝術大学美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程修了。博士(学術)学位取得。論文題目は『日本の活版印刷における紙型の再発見とその考察──物質的文字の断片に対する視覚文化論的解釈』。作品『文字の種』は野村美術賞受賞、東京藝術大学大学美術館収蔵。